2022-11-29

インタビュー

メンバー紹介 CPO寺村拓朗

procesジョインのきっかけ - 「この先10年の人生プランは何ですか?自分にとっての”proces”とは。」

代表の岡本は高校時代のサッカー部の先輩で、定期的に東京で会っていた。

「アパレルブランド向けのSaaSを立ち上げる」と話を聞き、僕自身は学生時代からソフトウェア, 機械学習領域で働いていたため、radialの初期MVP構築のための仕様設計を手伝ったのがprocesと初めて関係を持ったきっかけである。

当時、転職しようと思った会社の方に僕を紹介してくれたのも岡本である。その会社での選考は当たり前に通るだろうと思っていたのだが、なんと落ちてしまった。そのとき面接官をしてくださった方の態度がある質問の回答で急に変わったのを今でも覚えているが、それが、「この先10年の人生プランは何ですか?」というものである。

  • 今までの自分の人生を振り返ってみて長期の計画通りに進んだことが一切ないこと
  • 逆に計画事態が縛りとなって目的を履き違えてしまうこと
  • 偶然の出会いが人生の分かれ道となってポジティブな方向に進んできたこと
  • 不確実性の高い世の中で26の若造が10年先を思い浮かべること自体ナンセンスに思えたこと

様々な理由から「人生プランはないですね。。」と応えた。「自分の人生の計画も立てられない人に会社の計画は立てられない」と一蹴され60分の面接が10分で終わってしまった。その会社に入社できなかったことは納得しているしその判断が正しかった可能性が高いと自分自身も振り返れば思っている。しかし、「自分の人生の計画も立てられない人に会社の計画は立てられない」というのは今でもその意味が理解ができていない。

半年以上のニート期間を経て、ようやくここで働きたいと思った会社であったので少し落ち込んだ。貯金がもう底を着きそうだということで岡本に「すいません、バイトさせてくれませんか?」とLINEしたのがprocesと密な関係になったきっかけである。

会社を経営することやプロダクトの新規開発をすることは、海外を初めて旅するのと同じようにあらかじめ自分が知っていた情報の範囲から大きく逸脱することが多い。もともと想定していなかった問いを突きつけられそれにいちいち答え続けなければならない。中長期のプランはありつつも、毎日そのときどきの状況に対して最善の選択を取り続けることでしか自分たちが当初想定していた(もしくは想定していた以上の)コトを成し遂げられないのではないだろうか。だからこそ”proces”を大事にすることを心に留めて今この瞬間のプロダクト開発に全力を注いでいる。

起業家とPMの違い。そして向き合うアパレル顧客課題

「ほとんど賛成する人がいないような、大切な真実とはなんだろうか?」これはピーターティールが採用面接で聞くという有名な質問である。この質問はとても難しく僕は自信を持って回答できるものがない。しかし未来をつくっていく起業家はこういう類の質問に食い気味に答えられる。何が違うのだろうか。

特定の領域での突出したオタクレベルの知識を持っていたり、過去の特異な経験から世の中に対する強烈な不満を持っていたり、様々な要素があるように思われる。そんな中でも一番違う要素は”自己”の強さだと感じている。自己実現はどこまでいっても自己の中にしか存在しない。その実現に奔走した結果、周りが共鳴し”思い描いていた真実(未来)と現在の差分”が埋まっていくことで、より良い新しい世の中が形作られていく。

一方、僕が日々プロダクトと向き合っているPMというロールは自己とはあまり関係がない。対象が存在しており、プロダクトによる顧客課題の解決が何よりも重要である。”やりたい”, “面白そう”といった妄想からプロトタイプを作ることはあるものの、結果として社会に望まれなければ何も意味がない。

radialの顧客はアパレル業界で働く方々である。僕自身は学生時代にビジネスシャツ屋さんでバイトをしていた経験があるのみで、アパレル業界での社会人経験はない。経験豊富なチームメンバーや、ユーザーインタビューを快く受けてくださる顧客の皆さんに助けられ、PMとしての”自己”を少しづつ顧客に近づけることができている。

世界に目を向けてみるとtoCでもtoBでも業界や国籍も関係なく世に受け入れられるプロダクトの開発を主導できるスーパーなPMがいる。彼ら彼女らの”自己”はどうなっているのだろうか。顧客に近づける努力をしているのは間違いないと思うが、それだけでなく顧客を超えた人間に対する普遍的なアプローチ法があるからこそ全くタイプが異なるプロダクトを成功させることができているように思われる。未来(真実)に少し寄せた”自己”を持つアプローチ法とも言えるかもしれない。radialによって顧客課題の解決を目指すのはもちろん、僕個人としてのテーマは、PMとしての”自己”をできるだけ顧客に近づけるだけでなく、少しだけその”自己”を未来に寄せるプロダクト開発手法を見出すこと。その方が結果として起業家が生み出す”世のポジティブな差分”をPMとしてチームとして生み出していけるのではないだろうか。

プロダクトにおける境界線を、自ら手を動かし曖昧にしていく

顧客が持つ痛みとも解釈できる課題を解決するプロダクトを生み出し続けるためには、攻め入るマーケットの選定から自社のポジショニング決め、課題の解像度をあげると共にそれを解決するための顧客体験の定義やアイディエーション及びその実装とやらなければいけないことがたくさんあり、PMは様々な局面に顔を出す。そういったカバー範囲の広さゆえに、一般的にソフトウェアプロダクトのPMはビジネス, デザイン, エンジニアリングの3つの領域の総合格闘技と言われることがある。

PM自ら手を動かしてプロダクト開発をすることは一般的にはあまりないが、radialのPMとしてはこれらの境界線を自ら手を動かして曖昧にしていくことを基本思想に日々のプロダクト開発を行なっている。筋の良い仮説を立ててfigmaでプロトタイプを作成しユーザーインタビューの実施、機能要件としてDBのスキーマ定義からUIデザインも踏まえた機能要件策定、そしてフロントコーディングをし顧客へ短い間隔でデリバリー(サプライズ)をし続ける。

リソースが豊富にないからこそ領域を分けずにPM自ら手を動かさなければいけないという致し方ない事情もあるが、毎日こういった業務を行なっていると多くのポジティブな発見がある。例えばUIをデザインする際にDBスキーマを理解していればオブジェクトのビューを定義するUIモデル図を無理ないものとして設計することができるだけでなく、figmaでプロトタイプを作成する段階から実装の拡張性や描画パフォーマンスを意識した設計を行うことが可能となり、境界が明確な従来のスタイルでは難易度が高いより良いUXを追求することができる。また顧客からの要望をいただいた際に、実現可能性や工数に対する見積もりの精度が上がるのは当たり前として、顧客の課題に対する直接的な解決策ではなく、情報設計のレイヤーから表層のデザインのレイヤーまでを考慮した深みのある解決策を提示できるようになり、その深さがゆえに顧客の複数の課題を一挙に解決できるようなツボを多く発見することができる。

“人間は道具を作った動物ではあるが、道具の使い方を学ぶことが私たち自身を変える、という点に道具と人間の本質があることを意味している。”というアランケイの言葉がある。PMとしての”自己”をできるだけ顧客に近づけていくだけでなく、自らデザインし実装しつくっていくことによってその”自己”をより未来に寄せることができる。まだ顧客の考え方, 感じ方, 振る舞い方を変えるようなプロダクトの提供が十分にできているわけでは全くないが、顧客を進化させるプロダクトをつくりたいし、そういったプロダクトをつくることができるよう手を動かし続けるチームをつくっていきたい。

そもそもデザインもエンジニアリングもビジネスも境界線は存在しておらず、人が勝手に言葉に落とし込みそう認知しているだけのようにも感じられる。良いアイディアを思いついたら不可逆なものでない限り自ら手を動かし顧客に動くものを触ってもらう。たとえ失敗したとしても課題の構造をより理解できるようになり、手を動かさず熟考している何倍もの発見がある。その試行錯誤をどこまで高速にそして長く続けられるかがradialが追求しているPMスタイルである。